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四月大歌舞伎 昼の部 2007.4.8 [歌舞伎]

月曜日の夜の部に引続き、今日は昼の部へ…
今月はガンズのライヴとかが入っていたので、早いうちに観ておこうと思ったのだが、そのガンズは来日延期…
こんなことなら、別にアセって予定を入れなくても良かったよなぁ~とは思うものの、まぁ、いっか。
本日のお席は1階2列19番。(「男女道成寺」だけは6列5番に席替え)


●當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)
工藤祐経(歌六)を親の敵と狙う曽我五郎(獅童)と十郎(勘太郎)の兄弟は、馬の頭部を付けた跨り棒=春駒というおもちゃの行商人に姿を変え、舞鶴(七之助)の手引きのもと、工藤の館に入り込む。


まさに襲名興行の幕開けに相応しい曽我物のご祝儀舞踊だ。
舞台がとっても華やか…

五郎の獅童、この方の場合見た目はいいんです。
まさに五郎にピッタリな雰囲気なわけです。
それゆえに動きの悪さにガックリしてしまうんです。
踊りは荒っぽいだけだし、腰はちっとも入っていない。
何だか身体の芯がブレまくってるなぁーと思っていたら、案の定、最後に膝を着いて見得を切るところで、バランスを崩して倒れそうになってしまってビックリした。

十郎の勘太郎は、さすがに上手い。
しなやかな手捌きも美しいし、品良く大らかな雰囲気で、十郎という役どころの性根がよく出ていた。

珍斎の種太郎。
いやぁー、本当に上手くなった!
昨年五月の演舞場で「寿式三番叟」での千歳を拝見した時から、かなり踊りが上手いなぁーとは思っていたけれど、更なる上達ぶり。
素直な踊りが観ていて気持ち良い。
最近拝見する度に関心することが多いし、かなりの勉強家なのかも知れない。

 

●頼朝の死(よりとものし)
源頼朝の三回忌供養の場。
嫡男の頼家(梅玉)が姿を見せないと騒ぐ群衆を、隠密の中野五郎(東蔵)が鎮めたところへ、頼朝の御台所政子(芝翫)の侍女、小周防(福助)がやって来る。
その卒塔婆奉納をとりなした覆面の武士は、畠山重保(歌昇)。
落馬が原因と伝えられる頼朝の最期に居合わせた人物だが、法要に姿を見せなかったために、大名の榛谷重朝(門之助)や藤沢清親(松江)らに訝しがられる。
頼朝の死の真相を知りながらも政子らに口止めされている重保は、耐えきれずに幕府の重鎮大江広元(歌六)に心中を吐露する。
一方、頼家は父への想いや無力な自分の立場に悩んでいた。
父の死の真相を知りたい頼家は、重保を追求するのだった。


うーーん、この演目は初めて拝見したけれど、正直言って好きではなかったなぁ。
もうね、本当にくどいの(笑)。
途中からイライラしてきたし←失礼
重保には「もういいから、さっさと白状しちゃえばいいのに!」とか、頼家には「もういいじゃん、諦めなさいよ~」と何度も思ったし、ははは。
こんなに泣いてばっかりの芝居を、毎日毎日演り続けている役者さんは本当に大変だなぁーとも思ったよ。

新歌舞伎らしく舞台装置が美しいのは、とっても良かった。
特に二場で月明かりの下、御簾越しの梅玉の頼家の横顔は、憂いを帯びていて何とも美しく、まるで自分がその時代にいるような感覚に捕われた。
この方のニンに合っているのだろう。
台詞廻しにも仕草にも気品が漂っていて、さすがの出来。

畠山重保の歌昇、まさに熱演。
実直な人柄がとても良く出ていて、苦悩する姿が何とも痛々しく感じる。
特に政子の命に従って自らが愛する小周防を手にかけるところでの葛藤は素晴らしかったが、その後の嘆きがもう少し欲しいところだ。

中野五郎の東蔵、何だかものすごく若々しい!
目を吊っているのかなぁ~←これまた失礼
この方は何を演られても安心して観ていられる。
こんな役者さんってあまり居ないから貴重だよねぇー。

小周防の福助、新歌舞伎ということを意識しているのか、表情の造り方や動きがかなり大きいように思う。
何だか一人だけ浮いてしまっているように感じたのだけれど…
芝居ってやっぱりアンサンブルが大切なのだなぁーと思った。

政子の芝翫、さすがの存在感。
こういうコワい女性を演らせたら天下一品です(笑)。
特に薙刀を持ち出すところなんて、まさに政子そのもので凄みがあった。

 

●男女道成寺(めおとどうじょうじ)
道成寺の鐘の供養に現れた、美しい白拍子桜子(仁左衛門)と花子(勘三郎)。
奉納の舞いを舞ううちに、桜子の烏帽子が取れ、左近という男の狂言師であることがわかってしまう。
「京鹿子娘道成寺」のパロディ化した舞踊。


実は昼の部で一番楽しみだったのがこの演目。
仁左衛門と勘三郎という組み合わせは悪くは無かったが、やはり二人の持ち味が違う点では、いささか違和感があったことは否めない。
この幕では仁左様贔屓の友人とお席を交代したが、運よくその友人は手拭をゲット出来たようで本当に良かった。


仁左衛門の桜子は、やはり化粧が男のままだということもあって、いささか硬い雰囲気。
しかしながら扇遣いなどは、丁寧で美しい。
狂言師と見破られるところは、実にひょうきんで可愛い(笑)。
ここからは踊りが軽妙になり、花子との踊り分けが何とも面白い。
あまりに楽しくて思わず目を細めて拝見していた。

勘三郎の花子は、まさに手堅い出来。
花子を演る時の勘三郎はいつもより1.5倍増くらいに目が大きく見えるのだけれど、あれはずっと目を見開いているんだろうなぁ。
それが本当に可愛らしい娘のような雰囲気を醸し出している。
通常の「京鹿子娘道成寺」の時よりリラックスして踊っているように感じたが、やはりパロディー物ということだからなのだろうか…
踊りを観るという点では少々物足りなさも残るが、パロディーを楽しむと思えばこの方がこちらも肩の力が抜けるというものだろう。
ただ、最後の鐘入りだけはもっと情念のようなものを見せて欲しかったかなぁー。
通常はカットされる手踊りの「ただ頼め」を入れてくる辺りは、やはり勘三郎らしい。


●菊畑(きくばたけ)
・劇中にて襲名口上申し上げ候
菊が咲き誇る兵法学者の吉岡鬼一法眼(富十郎)館の庭。
奴の智恵内(吉右衛門)は、実は幼い時に別れた鬼一の弟鬼三太で、鬼一が敵方の平家側に与する真意を探るため、さらに秘蔵の兵法虎の巻を手に入れるために、虎蔵と偽った主君の牛若丸(信二郎改め錦之助)とこの館に奉公していた。
虎蔵に一途な恋心を抱く鬼一の娘皆鶴姫(時蔵)は、二人の素性を知ってしまい、さらに皆鶴姫との政略結婚を企む笠原湛海(歌昇)にも、そのことが漏れてしまう。
仕方なく牛若丸は湛海を切り捨て、皆鶴姫の手引きで鬼一法眼の部屋へと向かうのだった。


私、この知恵内が幕開きにでっかい毛抜きで髭を抜いている場面が大好き。
あんなにゴツい見た目なのに、何だか可愛いよねぇ~(笑)。
吉右衛門はやはり手に入ったお役なのか、愛嬌もあり立派でさすがの出来。
この方の台詞廻しの緩急は本当に素晴らしいよねぇー。
厳しさと優しさと愛嬌を出す表情分けも見事で、安心して観ていられた。

虎蔵こと牛若丸の錦之助、風邪をひいているのか、はたまた夜の部の放駒長吉で喉がヤラれてしまったのか、かなり辛そうな声。
まだまだ1週間も経っていないのに、これでは大変そうだなぁー。
前髪立ちの奴の拵えはとても良く似合っているし、雰囲気もなかなかのものだ。
でもねぇ、やっぱり何だか元気がないというか…
うーん。
義太夫のノリも硬くてあまり良くなかったし…
好きな役者さんだけに、もっと頑張って欲しいなぁー。

鬼一法眼の富十郎、やっぱりまだ台詞が入っていなぁーい(涙)。
プロンプがまる聞こえなんですけど…
でも、さすがの存在感で登場すると同時に舞台がグッと締まるのは、やはり凄いことだ。
病に臥していた感じを出しているのか足元が覚束ないと思っていたら、右膝を痛めていたようだった。
そういえば鬼一法眼っていつもは花道からの登場だったと記憶しているけれど、今月は舞台上手から出ていた。
これも膝のせいなのかなぁー。

皆鶴姫の時蔵、夜の部の下町のおかみさんとは打って変わった赤姫姿。
これがまた品があって本当に可愛らしく美しいのだ。
吉右衛門の知恵内との遣り取りでは絶妙の間合いで、相性の良さを感じる。

笠原湛海の歌昇、実はこの湛海が個人的にはかなりツボだった。
悪人なんだけど、妙に色気がある。
今まで拝見した湛海とはちょっと違って、どこか憎めない雰囲気を持っていた。

劇中口上では富十郎が右膝を痛めてしまっているからと、床几に座ってのものだった。
他の方々は普通に正座していたけれど…
それにしても時蔵は皆鶴姫の衣装と鬘のまま、ずーーっと下を向いて正座しているのだから、これは相当体力がいるし大変だろうね。


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もこもこ

14日に昼の部拝見しました。

昼の部は歌昇さん大活躍でしたね。
頼朝の死、私もいらいらしましたよ。襲名興業に、あんなに泣きっぱなしの芝居でよろしいんでしょうか?

私も男女道成寺が一番楽しかったです。初めの桜子は、やっぱりどうよ、と思いましたが、男に戻ってからの仁左衛門さんが美しくて、衣装替えして登場する度に、ほーっと思わずため息が出ちゃう。
花子とおそろいの衣装がほんとにお似合いです。
勘三郎さんも、カワイイ娘にしか見えない!!インド帰りで素顔は日焼けで真っ黒の筈なんですけど、、、

猿弥さんの所化の踊りも楽しかったです。

ご友人、手ぬぐいゲットできてよかったですね。
by もこもこ (2007-04-15 17:28) 

愛染かつら

もこもこ様

昼の部はまるで歌昇さんの襲名興行のようでしたねぇ~。(笑)
「頼朝の死」はもこもこさんもイラッとしましたかー。
よかった、私だけじゃなくて…
好きな演目に挙げられる方も多いと聞きますので。
お祝いの興行に「死」なんてお題に付く演目もなんだと思ったのですが、拝見した尚更思いました(笑)。

「男女道成寺」は面白かったですねぇー。
通常の道成寺との違いを感じながら楽しむとより面白いと思いました。
花子のお衣装を男性版にしたものも美しかったですね。
猿弥さんの所化は、なんだか嬉しかったですね。

そうそう、手拭、嬉しそうでしたよー。
by 愛染かつら (2007-04-16 02:19) 

mami

愛染かつらさん、こんばんは。
「頼朝の死」は私も好きじゃないです‥‥。はっきり言うと、青果作品が苦手になったのはこの演目を観てからです、ハイ。今月も、歌昇も梅玉も熱演だったのはよくわかるんですけどねえ。なんか疲れちゃって(笑)。

ま、その後が華やかな「男女道成寺」に「菊畑」で気分一新させてもらったので、よかったです。
富十郎さんの膝が心配ですが、16日にはプロンプはさすがについていませんでしたよ~。
種太郎君はほんとに上手になりましたね!伸び盛りの人を観るのは楽しいです。
TBさせていただきます。
by mami (2007-04-18 23:36) 

ShyBoar

愛染かつらさん、こんにちは。ちょっとご無沙汰しました。
少し仕事が立て込んだりして遅れ気味なのですが、ようやくアップしましたのでTBさせていただきました。
「頼朝の死」は、テーマはわかるものの、本当にくどい!私はそれでも一応つきあって見てしまう方ですが、今時の御見物には少々重たいのでは、ということが気になってしまいました。
それにしても、今回もまたニアミスだったようですね。
by ShyBoar (2007-04-19 00:07) 

愛染かつら

mami様
こんばんは、mamiさん。
いつもコメントとTBを有難うございます。

>「頼朝の死」は私も好きじゃないです‥‥。はっきり言うと、青果作品が苦手になったのはこの演目を観てからです、ハイ。
★あああ、分かるような気がします。
私も今回この「頼朝の死」を拝見して真山青果ものが嫌いになってしまいそうでした。
疲れましたよねぇ。
「元禄忠臣蔵」くらいだったら、まだ良かったんですけどねぇー。
真山作品が苦手だと仰る方が多いというのが、今回よーく分かりました(笑)。

>ま、その後が華やかな「男女道成寺」に「菊畑」で気分一新させてもらったので、よかったです。
★本当にそうでしたよね。
「菊畑」もそれほど好きな作品ではないのですが(苦笑)、今回はなかなか楽しめました。

>富十郎さんの膝が心配ですが、16日にはプロンプはさすがについていませんでしたよ~。
★おおっ、さすがに16日では台詞も入っていたのですね!
お膝は心配ですよねぇー。
踊りの名手な方なだけに、これからも軽妙な踊りを見せて戴きたいですものね。
早く良くなられることを願いますね。

>種太郎君はほんとに上手になりましたね!伸び盛りの人を観るのは楽しいです。
★みるみるうちに上手くなっていきますよねぇー。
こういう方の演技を拝見させて頂くのも楽しみですね!
by 愛染かつら (2007-04-19 02:33) 

愛染かつら

ShyBoar様
こんばんは、お久しぶりでした。
お仕事、お忙しいのですねぇー。
お疲れのことと思いますが、頑張って下さいね!

>「頼朝の死」は、テーマはわかるものの、本当にくどい!
★そうなんですよねぇー。
テーマそのものは嫌いではないので、私もついつい入り込んで観てしまうのですが、それゆえに「くどい」と思ってしまいます。
もっとサラッと流せればよいのですが…(苦笑)。

>それにしても、今回もまたニアミスだったようですね。
★あああ、前もって分かっていたらご挨拶出来ましたのにー。
残念です。
by 愛染かつら (2007-04-19 02:36) 

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