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コクーン歌舞伎「三人吉三」 昼の部 2007.6.24 [歌舞伎]

前回拝見した時にあまりに素晴らしかったので、思わず予定になかった再見をしてしまった。
コクーンの場合は前半と後半では随分と演出なんかも変えてくるみたいだし…
本日のお席は中2階ML列18番。
またまた中2階のお席だったが、ML列だったので前回とは違った角度で舞台を観ることが出来たのは良かった。
それにしても前回にも増しての立見の数。
やはり評判が良いだけに何とかしてでも観たいという人が多いのだろう。

 

●三人吉三
今回のこの「三人吉三」でやはり一番良かったのは、十三郎の勘太郎とおとせの七之助だ。
この兄弟の二人だからこそ双子だったという話しに説得力があった。
十三郎の勘太郎は前回拝見した時より更にひとつひとつの仕草に情味があった。
百両を落としてしまったと放心状態でて通路を歩く十三郎は、今回は客席に座り込んでしまう(笑)。
「どうしたらよかろうなぁ~」と横で項垂れられてしまったら、横の人はどんな顔して見ていたら分からないだろうねぇ~。
和尚から裏の墓場で待っていてくれと言われた後、おとせと連れ立って行く様は何ともいじらしくて和尚でなくとも涙を誘う。

おとせの七之助、硬さが取れ随分とふわっとした色気が出てきていた。
自宅に十三郎が居て喜ぶ姿が本当に可愛らしい。

お坊の橋之助、佇まいに色気が出てきた。
育ちの良さも感じられ、お嬢と和尚に対する気持ちの有様が明確になってきたように思った。

お嬢の福助、私の座っている席の関係もあるのかも知れないが、台詞に緩急が付き、実に聞き取りやすくなった。
立廻りでの型の美しさも出てきた。
カテコでは放心状態のままで、かなりお役に入り込んでいるのが分かる。
まさに全力投球している感があった。

和尚の勘三郎、とにかく吉祥院での演技が素晴らしい。
前回拝見した時には目が赤いと思ったのだが、実際は目の周りに赤い化粧を施していたことが判明(笑)。
しかしながら十三郎とおとせが二人並んでいる姿で、既に鼻水まで垂れ流しで涙していた。
毎日こんなに辛いお役を2回も演るのは辛いだろうねぇ~。

配役的には前回まさにこの「三人吉三」にピッタリだと思った伝七の笹野高史だが、今回は何故だか今ひとつだった気がする。
特に伝七内での独白においての台詞に迫力が欠けていた。
前回は「犬の祟り…」というところでは本当に恐ろしいという気持ちが現れていたが、今回は台詞が一本調子過ぎた気がする。
これはBGMの音量が抑えられてしまったせいなのかも知れないが…
しかしながらその後のお竹蔵裏での見得の切り方はだいぶ良くなってきたように思う。

今回、音が随分と絞られてしまったのは、かなり残念な箇所だった。
確かに前回は大きすぎて台詞が聞こえづらかったところもあったのだが、それ故の迫力に満ちていた。
どうせ絞るのなら、幕開での安森屋敷塀外の場では最初から大音量のギター音にせず、犬を殺してしまったところだけ大きくすれば良かったのではないかと思う。
また吉祥院での音もかなり絞られて、三味線がなぞる旋律がより印象的になっていたのは良かったかも知れない。
大詰での音楽に関しては、やはり歌は要らないと今回は前回に増して痛烈に思った。
歌が入ることによって、悲劇性が薄いものになってしまうように感じるのだ。
その後の「玉手箱」を効果的にする為にも、その方が良かったのではないだろうか…

否定的な部分もあるにはあったが、素晴らしい舞台だったことは否めない。
今回は早々にスタンディングとなり、演出家の串田氏が実に嬉しそうな表情で場内を見渡していたのが印象的だった。


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